セイルチェアを選択する前に理解すべきこと

※先頭固定記事 随時加筆しています

こんにちは、アーロンチェアの庄文堂、近内です。

今回はセイルチェアについてお話します。

アーロンチェアの記事と連動していますのでお時間あるときにでも読んでみてください。

何が出来てどういう椅子なのか

腰のサポートとしてはランバーサポート同様の機能が備わっている背もたれ・パッシブポスチャーフィット仙骨サポートがあります。弊社では在庫していませんが、ランバーサポートパーツも存在します。これは後述します。

筆記やキータッチなど、集中すると前かがみになってしまうケースに対応すべく前傾チルト機能が設定可能。

座面奥行調節が可能で、リクライニング強度も設定可能。

後述しますが、仕様上のアソビや可動音が気になる方が一定数いらっしゃいますので、事前に理解しておく必要がございます。

他のモデルと比べて安価な理由は?

セイルチェアはアーロンチェアなどに比べて安価な事に加え、高いデザイン性により非常に人気があります。

では、何故ここまで安価なのか。

前傾機能も付いていますし、アームに制限があるとはいえ、アーロンチェアの半分以下の金額です。

 

セイルチェアは御覧頂くと分かる通り、背もたれにフレームがございません。

この背もたれにより上半身の柔軟な動きに対応できます。

加えて、アーロンチェアやミラ2チェアのようにメッシュではなくウレタンクッションの上にファブリックを張った座面を採用しています。

これはマイナスの一面もあり、ウレタンの特性上、長期の使用によりユーザーの体型に合わせて沈み込んでしまう事は避けれないと思います。

ただ、2~3年でなるような話でもないですけどね。

外付けのランバーサポートもありますが、設計の段階からランバーサポートと同様のサポートを受ける事が出来るような背もたれの張りをしています。

この背もたれにはポスチャーフィット機能も設定されています。

ちなみに弊社で販売している製品には最初からランバー付きのモデルはございません。上記のようにランバーサポート同様の機能が最初から備わっているからというのが最大の理由です。

加えて私自身、他のスタッフもですが、ランバーサポート付のモデルに座った際に、そこまで実感できなかったことも大きいです。

ランバーサポートは位置調整が可能ですが、実感できなかったという事は、適切な位置に設定する事が難しいだろうという判断をしています。

せっかく追加料金を払ってランバーサポート付を購入しても、ランバーサポートの位置が少し上だった、少し下だった。という具合に、恩恵を100%受けきれてなかったらちょっとね・・。と感じたからです。

 

また、国内で販売されている多くの製品がアームを高さしか調節出来ない「高さ調節アーム(ハイトアジャスタブルアーム)」仕様です。これは後程フルアジャスタブルアームとの比較を紹介します。

上記が全てではございませんが、価格も含めてデザインされた非常に優秀な椅子です。

どんな体格がぴったり?

結論から申し上げますと、1つの個体として判断した場合、一番広範囲の体格をカバーするのはセイルチェアなのではないかと感じています。

パーセンタイル値で比べるとアーロンチェアが広範囲をカバーしていますが、アーロンチェアはサイズが分かれていますからね。

耐荷重も159kgまでと優秀です。

広範囲をカバーする要因としてはやはり座面奥行調節が可能というところでしょうか。座面をスライドさせて奥行を調節できることに加え、ウレタンクッションのクッション性が功を奏し、フレームの先端に足が当たっても多少であれば痛くない事が大きいです。

座って左側のレバーを引くと調整出来ます。下の写真の右上のレバーです。

無段階ではなく、1cm刻みで5段階です。

このフレーム先端に足が当たってもという部分ですが、感覚的に150cm台の方が多いですかね。

150cm台の方はハーマンミラー社製のオフィスチェアで適合するものを探そうとすると、アーロンチェアのAサイズか、セイルチェアしか選択肢が無いと考えています。

アーロンチェアの先端は樹脂ですので、当たると痛いんですよね。

セイルチェアはウレタンクッションですので、多少当たっても痛くないというのは大きいんです。

ただ、広範囲の方に適合するだろうとは見ていますが、ある程度身長が高くなると、背もたれが低すぎる印象も受けますね。

その場合はアーロンチェアやミラ2チェアを試してみましょう。

座り方が重要ですよ

まず、ハーマンミラー社製のオフィスチェアにはポスチャーフィットという腰のサポートが導入されています。

アーロンチェアのポスチャーフィットは外付けでパッドになっておりますが、セイルチェアやミラ2チェア、エンボディチェアなどのアーロン以外の椅子は設計の段階から出っ張るようにデザインされています。
パッシブポスチャーフィット仙骨サポートと言います。

簡単に言うと、着座姿勢をとった際に、斜めに傾いてしまう仙骨・骨盤を後ろから支え、傾いている状態から立たせる事によって、根本からまっすぐにし、猫背を予防しましょうというサポートです。

このサポートの恩恵を受けるためには椅子に深く座る必要があり、極端な話、深く座ってサポートの恩恵を受けないのであれば、別にハーマンミラー社の椅子でなくてもいい話かなと思います。

上記のポスチャーフィットに腰を当てるために深く座って頂きますが、その際に、フレームの先端に脚が当たってしまって痛くなければサイズ的には問題ありません。

フレームに触るぐらいであれば問題ないですが、当たって痛いとなると、血流の阻害となりますので避けてくださいね。前述した通りセイルチェアはウレタン+ファブリックのため比較的当たっても痛くないですね。

高さ調節アームとフルアジャスタブルアームを比べると

これは非常に多くのお客様にお問い合わせ頂く質問です。

高さ調節アームとフルアジャスタブルアームはどっちが良いんですか?

圧倒的にフルアジャスタブルアームの方がエルゴノミクスですが、ほんとの極論、小柄な方以外は好みかなって思います。

※2022年年末ぐらいを目途にほぼ全ての在庫品をフルアジャスタブルアーム仕様にします。

フルアジャスタブルアームは高さ調節に加え、①奥行調整、②扇状に首振り、③左右スライドが出来ます。

高さ調節アームとフルアジャスタブルアームを比べると、パッド自体は1.5倍ぐらい大きさが違います。

下の写真、大きい方がフルアジャスタブルアームのアームパッドです。

大きい方が腕を乗せた時に安定しますね。でもこれは、体感の域を出ないです。

3つの調節機能についてです。

①奥行調節はデスクに収める際に少し深く入れる事が出来ます。

②扇状に首振りは、パッドの角度を「ハの字」することによって、キータッチ等作業を行う際、腕の進入を適切な角度でサポート出来るようになります。

これ、逆ハの字も出来るんですが、これはどういうケースで使用するんでしょう・・。もし何か知っている人がいたら教えてください。

考えられるものとして、逆ㇵの字に腕を広げて載せる事で胸が開き、休憩時の呼吸の質を上げる事が目的でしょうか。

③左右スライドは小柄な方ほど恩恵を受けやすいのではないでしょうか。

椅子に座ってアームに腕を置く際、小柄な方ですと、アームの位置が自分の肩より大きく外側にあるという事がございます。

大きく外側にあるアームパッドに腕を置くと、肩が広がり、かえって肩に負担がかかるという事があります。

このスライド機能を使って内側にアームをずらせば、この問題は解決できます。

上記のような細かい調節が可能になりますので、フルアジャスタブルアームの方がより細かい問題に対応できますね。

 

リクライニングについて

そもそも座るという行為自体、身体に負担がかかる行為になります。

背もたれに寄りかかって110度ぐらいに開いている状態と、前傾で80度ぐらいに傾いている状態では、筋肉・椎間板への負担は大きく異なります。

さらに、座る事により、股関節・膝と2か所に屈曲が出来てしまいますね。

そこで血液の循環が悪くなり、むくみやだるさが出てしまう事に繋がっていきます。

その負担を減らすためにも、意図的に動くことをお勧めしています。

上下昇降デスクが出てきたのもこの流れで、立って仕事がはかどる!とかでは無いです。

意図的に身体を動かすことで健康な状態を保ちましょうってことですね。

上下昇降デスクも良いですが、家庭内で、職場内でと使いまわせるデスクライザー「モント」がお勧めです。

実際に試して頂けると分かるのですが、ハーマンミラー社のリクライニング硬さ調節はかなり幅があります。

柔らかい設定から硬い設定まで、体重が軽い方から重い方までですね。

車に乗って運転するときに、シートの高さを調節して背もたれの角度調整もしますよね。

それと一緒で作業をするために適切な設定が必要です。

 

分かりやすくするために、最初はわざと合わない設定にしてから徐々に合わせていくのが良いかと思います。

私が推奨している合わせ方なので、ほかにもっといい合わせ方があるかもしれません。

いや、あると思います・・

まずはじめに、リクライニングの硬さ調節レバーをマイナスいっぱいまで回してください。

そうすることにより軽くなります。

体重によってはこの状態で座るとひっくりかえるぐらいになりますので、気を付けてくださいね。

手で押しても軽いのが分かるので、明らかにアレな場合は硬めからスタートでも良いです。

この軽い状態でリクライニングをして、上体を起こして戻る時、自分の力で戻っているのであれば、軽すぎます。

自分の力で戻るという事は、自分の腹筋を使って無理矢理起きている状態です。

この状態からどんどんプラス方向にレバーを回し、ある程度自分の力では無く、誰かが後ろからちょこんと押してくれているような戻り方になるまで調整してください。

これでOKです。

前傾設定について

前傾チルトってよく聞くけど何のこと?って方、多いと思うんですよ。

前傾がいいらしいよ。セイルチェアって前傾も出来るんでしょ?ん~、いいかもしれないなぁ。でもよくわかんないな。

理由が分からないから何が良いのか、何に効いてるのか分からないですよね。

人間は見たいものに姿勢を支配されてしまう

皆さん経験あると思いますが、集中するとどうしても前かがみになってしまう事は仕方ない事だと思います。

人間は見たいものに姿勢を支配されてしまいます。

最近お客様に言うと、「あ~!」と共感の反応されるわかりやすい例として、コントローラーでやるゲームです。

大体みんな前かがみになっていると思います。

夢中になってゲームの画面を見に行くんですよ。身体全体を使って。

写真ではキータッチを例にあげます。

 見たいものに姿勢を支配される モニターを見る

人間の目は対象を見下ろすような造りになっているため、モニターの上部に目線の高さを合わせてください。

そうする事で全体を自然な体勢で見る事が出来ます。

 見たいものに姿勢を支配される モニターに前かがみで近づく

対象物に対して近づいて行ってしまうため、前かがみになります。

首が曲がり、背もたれと背中が離れます。

見たいものに姿勢を支配される 前傾設定をする

前傾を設定するとこんな感じです。仕組みは後述します。

前かがみになると股関節が圧迫されてしまいます。上半身だけが前のめりになるためですね。

上半身が前のめりになる事で上半身の荷重を背もたれで分散させることが出来なくなり、腹筋で身体を支えることになります。

これらが絡み合い、姿勢が固まり、血流が悪化、胸が丸まってしまうため呼吸の質も落ちます。

呼吸の質が下がると酸素の供給が低下しますのでパフォーマンスも落ちてしまうという流れです。

ちなみに私は呼吸とか、目に見えないものを言われるとちょっと引くとこがあるんですよね(笑)

ちょっと試してみましょうか。

これは、前かがみになった状態(胸が丸まってしまっている状態)と、背もたれにしっかり背中を預けた状態で深呼吸をしてもらえれば違いが分かると思います。

椅子に座り、手を胸の前でクロスさせ、右手を自分の左肩に、左手を自分の右肩に当て、少し前かがみになって深呼吸をしてみてください。
その後、背もたれに寄りかかって手を外し、外した手をアームに置くなどして胸が広がった状態で深呼吸をしてみてください。
そうすることで、前かがみになる事による呼吸の質の低下は体感頂けるかと思います。

意識しなくても呼吸はしていますからね。その無意識の呼吸の質が高いか低いかの話です。

アーロンチェアやセイルチェア、ミラ2チェアにある前傾チルト機能を使用すると、座面ごと椅子が前に傾きます。

そうすることによって、前かがみ時の股関節の圧迫を防ぎ、かつ、背もたれが前に傾く事で背もたれから離れてしまった背中をサポートします。

 背もたれに寄りかかった状態

前かがみになった状態

前傾チルト設定を行った状態

このような仕組みになっており、この仕組みだから前傾チルト機能をお勧めしています。

デメリットとなり得る箇所もあります

セイルチェアにはデメリットになり得る箇所がいくつかあります。

誤解が無いようにあらかじめ言っておきますが、仕様に関する部分のお話です。

セイルチェアをはじめとするハーマンミラー社製のオフィスチェアは、「人は無意識のうちに動いてしまうもの」という事でアソビが設けられています。

これから説明するものはそのアソビが引き起こしてしまっているものです。

製品としては問題が無く、メーカーの判断では許容範囲なのですが、気になる人はいますよという話です。

①座面ががたつく

これは、座面の奥行調節機構の仕組みが影響しています。

座面は本体側と座面側に2本ずつあるレールをスライドすることによって調節できるようになっています。

本体側のレール幅が1cm、座面側のレール幅が1.5cmです。

加えて、座って左側でしか座面を固定していません。

そのため、アソビとして座面が動きます。

この動きが気になってしまい、初期不良なのではないか。という連絡が多いですね。

 

②アームの高さが左右で微妙に違う

これは、ベース部分とシリンダー接合部にあるアソビが原因です。

これはぴったり1mmのズレもなくハマっていれば発生しないのでしょうが、場所柄アソビは必要ですよね。ベース部分とそこから上の位置関係によって左右アームの高さが異なります。

あまりにも酷いものは弊社の検品時に弾いています。

 

この2つは仕様上発生してしまうものなのですが、気になる方はそれなりにいますね。

一度気にしてしまうと意識しますからね。

ご相談いただければ可能な範囲で対応します。

異音が鳴るってよく聞くけど・・

私がセイルチェアを販売する上で一番心配しているのはここなんですよね。

セイルチェアはリクライニングの始点と終点でギアがぶつかるため必ず音がなります。しかし、動いている途中に引っ張るような音がなるケースがあります。

事象の原因はここでは書きませんが、ほぼ全てのケースで対応可能です。

どうしても輸送時に想定外の縦揺れなどが発生し、起こり得ることなんですね。

※この異音は割合でセイルチェアが多いからここで書いていますが、全ての椅子に可能性として有りますのでご注意ください。

異音が鳴るという事でハーマンミラーメンテナンスに送ったところ、その輸送中になんらかの衝撃が入ったのでしょう。到着時には音が鳴らなかった。という事があります。弊社に送って頂いた際にも同じような事がありましたね。

皆さんが思っているいる以上に、チルトメカはナイーブなんです。

いずれにせよ確実なものを届けるようにしますので、なにかあったら連絡を頂ければと思います。

最後に

いかがでしたでしょうか。

セイルチェアは広範囲の方にマッチする椅子で、必要にして十分な機能・性能を備えた椅子だと思います。

反面、音に敏感な方はリクライニングの始点終点の音がしますので考えた方がいいですね。

小柄な方にとって、とても良い選択肢の1つになるのではないでしょうか。

それでは、また次回。